今までの予防歯科は「歯を守る」ことを目的としていました。しかし、これからの新しい予防歯科は「歯と身体を守る」ものです。

皆さんは「パラダイムシフト」という言葉をご存知でしょうか。パラダイムシフトとは社会の通念が根底から変化することです。予防歯科は、今まさにパラダイムシフトを起こそうとしています。
これまでの予防歯科は、歯磨きや歯石取りを行うことでお口の中の健康を守ろうとしました。しかしこれからは、お口の中は当然のこととして、さらに全身疾患に対する治療・予防を目的としたメンテナンスを行わなければなりません。

実は、歯磨きや歯石取りには、生命をも脅かす危険が潜んでいます。除菌ができていない状態で歯磨きやスケーリング(除石)を行うと、歯肉に傷がつきます。その傷からお口の中の歯垢(細菌の塊)が血管内に入り込むと、菌血症を起こしてしまいます。菌血症は動脈硬化を進行させ、さまざまな重篤な全身疾患の原因となります。
つまり、徹底的な除菌を行ってからでなければ、歯や歯肉に良いと思っている歯磨きや歯石取りが歯肉を傷つけ、全身疾患のリスクを高めてしまうのです。
歯磨きや歯石取りから全身疾患に至る仕組み
【1】正常な状態
人体は、外界と体内を皮膚(表皮)によって遮断されています。
【2】歯磨きや歯石取りによって傷ができる
歯磨きや歯石取りによって皮膚に傷がつくと、外界と体内を遮断しているバリヤー(表皮)がなくなり、細菌が侵入しやすくなります。
【3】菌血症
この傷から1日に数万個の細菌が血液中に入ります。この現象を菌血症と言います。
【4】アテローム性プラークに変化
細菌が全身の血管に入るとアテローム性プラーク(粥腫)に変化します。このアテローム性プラークが動脈硬化の原因となります。
【5】血栓ができて全身疾患に
アテローム性プラークによる動脈硬化が進行すると、突然プラークが破れて血管内に血液が溜まります。それが血栓となり、動脈の内側を塞ぎます。また、血栓が別の場所にも飛んで、脳梗塞や急性心筋梗塞を引き起こすこともあります。
大阪にある当院では、歯周病菌が口腔内の傷から血管内に侵入して全身疾患を引き起こす前に、お口の中を「3DS療法」によって徹底的に除菌します。3DS療法とはマウスピースを使い、薬剤で定期的に口腔内を消毒する歯周病予防プログラムです。
3DS療法によって血管内への細菌の侵入を食い止めることは、歯科医師にしかできないことです。大阪にある当院では、鶴見大学歯学部探索歯学講座の花田信弘教授に教えていただいた3DSテクニックをベースに、さらに経皮毒が身体に与える毒性や悪影響を考慮した安全な除菌剤を使用しています。
3DS療法の詳細はこちら 「3DS療法で徹底的に除菌」
ネバネバした歯垢は見るからに汚そうで、毒性が高いです。そんな歯垢を石灰化させ、固めて歯石を作って毒性を落とすのは、身体の防衛反応なのです。新たな歯垢が歯周ポケットの奥に侵入するのを歯石がバリアーとなって防いでいるのです。
つまり、せっかく身体が防衛反応として作った歯石を除菌もせずに落とすことは、新たなネバネバした毒性の高い歯垢を歯周ポケットから血管内へ送り込む手助けをしていることになるのです。
健康面だけを考えると、除菌さえしていれば歯石が付着していてもそれほど問題ではありません。除菌後の歯石は邪魔者ではありますが、決して悪者ではありません。ネバネバした歯垢が悪者なのです。